受験を検討中のひと「中小企業診断士ってなにするの?税理士とか行政書士みたいなもの?それともいわゆる経営コンサルタント?」
こんな疑問にお答えします。
■この記事の内容
- 中小企業診断士への期待と実際
- 実は70年前から続く診断士制度
- 今後の役割(筆者のかんがえ)
私は平成最後の診断士試験に独学3ヶ月で1次2次ストレート合格しました。
「中小企業診断士ってなに?」
誰もが思う疑問ですよね?でもなぜかこの答えを知る前に受験しようか検討している。
なんとなくビジネススキルを高めることができる、副業や独立の可能性も感じる、中身はよくわからないけど興味がある。
この記事では、中小企業診断士とはなにか?どこからきて、どこに向かうのか、まとめました。
中小企業診断士は中小企業の経営をサポートするお仕事です
国が中小企業診断士に求めることは、中小企業に対する「経営の診断と助言」です。
法律上の国家資格として中小企業支援法第11条に次のように記載されています。
(中小企業の経営診断の業務に従事する者の登録)第十一条 経済産業大臣は、中小企業者がその経営資源に関し適切な経営の診断及び経営に関する助言(以下単に「経営診断」という。)を受ける機会を確保するため、登録簿を備え、中小企業の経営診断の業務に従事する者であつて次の各号のいずれかに該当するものに関する事項を登録する。一 次条第一項の試験に合格し、かつ、経済産業省令で定める実務の経験その他の条件に適合する者二 前号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められる者で、経済産業省令で定めるもの
お仕事相手は、まちの小さな会社さんです。
中小企業者とは、法令上の区分がいくつかありますが、イメージとしては地方企業のほとんどです。いわゆる大企業として上場企業がイメージされると思いますが、中小企業はその逆で上場していない会社程度のイメージで大丈夫です。
ですので、いわゆるキラキラした外資系経営コンサルタントの主戦場である上場企業が仕事相手ではなくて、地方都市の町工場、飲食店や会社さんが仕事相手ということになります。(あくまでイメージですよ)
▼いちおう、中小企業政策における基本的な分類をのせておきます。
業種分類 | 中小企業基本法の定義 |
製造業その他 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人 |
卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
小売業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人 |
サービス業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
お仕事内容は、経営の診断と助言です。
つぎに、中小企業診断士は「何をするか?」です。
うえで確認したように、法律上、「経営の診断と助言」が期待されています。
会社さんの現状や外部の環境分析を行い成長戦略をアドバイスします。成長戦略を実行するために具体的な経営計画の作成を支援し、その実行結果を踏まえた改善の支援を行います。
例えば、こんな相談がきます。
地方の老舗お団子屋さんの3代目「じつはこの10年くらい徐々に売上が下がっていて、赤字がつづいています。設備の老朽化もひどく買い替えたいけど手元資金が不足していて。毎月の借入返済も大きく新たな借入も難しいと言われています。どうしたらいいでしょうか?」
中小企業診断士になったつもりで考えてみてください。
中小企業診断士のお仕事は、経営の診断と助言です。
現状の分析、窮境要因の特定、あるべき姿のヒアリング、そのギャップを埋める現実的な方策、組織体制などなど。
状況は会社さんによって千差万別です。答えがあったり、なかったり。
実際に診断士業務をしているひとは合格者の18%で全国4,700人!?
国家資格である中小企業診断士には、中小企業者への経営の診断と助言が期待されています。
実際のところ、合格者みんながプロとして活躍しているわけではないようです。
まず、中小企業診断士は2万6千人(平成29年4月登録者数)います。
つぎに、平成27年度調査では中小企業診断協会登録者1万人のうち47%が経営コンサルティングを仕事にしていると答えています(回答率21.1%)。
つまり、かなり強引にざっくりまとめると、合格者の18%全国で4,700人が中小企業診断士業務を本業としていることになります。
※合格者はすべて登録しているとする
※コンサル業務を本業としているひとはすべて協会に登録しているとする
※協会登録者は回答者以外も回答者と同様の比率でコンサル業務を本業としているとする
弁護士、公認会計士や税理士などの有資格者のほとんどが本業としているであろう状況と比べると随分少ないですが、みなさまどのようなイメージでしょうか。
▼中小企業診断士の年収についてはこちらの記事をごらんください。
中小企業診断士制度には70年の歴史があった!
ではそもそも中小企業診断士制度ってどうして生まれたの?ってことを確認してみましょう。
1948年 昭和23年11月4日(木)
中小企業庁により「中小企業診断実施基本要領」が制定され、経営に関する専門家を活用する「中小企業診断制度」が発足しました。
ずいぶんと古くからありまね。
この頃は公務員が「中小企業診断員」として業務にあたっていたようです。試験に合格したひとが公務員となって仕事をしていたわけではなく、公務員のかたが「無試験」で職務についていたとのことです。
戦後復興を図る中で、官を中心とした護送船団方式の経済発展の一翼を担っていたのでしょうか。
いまでいう、各地域の商工会の相談員のような感じでしょうか。
1963年 昭和38年 中小企業指導法
現在の中小企業支援法が制定され、現在の中小企業診断士制度がつくられた。同法及び関係法令により中小企業診断士の試験が実施されることになりました。
科学的経営管理手法が欧米から輸入され、チェーンストア理論のペガサスクラブが発足し、ダイエー、ヨーカドー、ニトリなどなど数え切れないほどの大企業を輩出することになります。現在の資本主義をかたちづくった経営理論の基礎が築かれた時代といえるのかもしれません。
当時は民間の経営コンサルタントは少なく、官主導の経営指導といった側面が強かったようです。
2000年 平成12年 中小企業指導法の大幅改正
中小企業診断士にも「官から民へ」の流れが色濃く影響したようです。
まず、中小企業「指導」法が中小企業「支援」法へと名称変更されました。また中小企業診断士の役割を「国や都道府県が行う中小企業指導事業に協力する者」から「中小企業の経営診断の業務に従事する者」へと変更しました。
この頃以前にいわゆる資格ブームが加熱し、ビジネスマンが働きながら各種の資格にチャレンジすることが増加していました。また外資系コンサルティング会社が脚光を浴び、花形職種とされ、MBAが憧れの資格とされました。このような中でコンサルティング資格であり、MBAと親和性のある資格として中小企業診断士の資格も注目をあびるようになったようです。
▼中小企業診断士1次試験受験者数の推移
中小企業診断士の未来は明るい
中小企業診断士を取り巻く環境を考えてみます。
技術的な代替はしばらくなさそう
少なくとも他の士業よりは安心できる状況と思えます。
例えば、マイケル・オズボーンによる「なくなる職業」ランキングには弁護士、公認会計士、税理士や社会保険労務士など名だたる士業が上位にランクインしています。ですが、中小企業診断士は「なくならない仕事」のほうにランクインしています。
AIなどの技術の進化によって、基準が決まっているものや仕組みが定まっている仕事はどんどん不要となります。
おそらく、診断士業務の中でも環境分析の一部はシステマティックに容易に高度な分析ができるようになります。いまでもそうなっていますが、中小企業が標準的に備える程度には浸透していません。
競合がいない
これは意見が分かれるところです。見方にもよります。完全な私見です。
いわゆる経営コンサルティング業界には、外資系コンサル、国内コンサル、大手会計事務所系コンサル、地方会計事務所、中小企業診断士など様々なプレーヤーがいます。もちろんその他独立コンサルがいます。
このうち、主に中小企業者を対象としているのは、大手会計事務所系コンサル、地方会計事務所、中小企業診断士となります。近年では中央の大手会計事務所系コンサルが地方進出を勧めています。中央で培ったスキームをパッケージで当てはめるスタイルです。一方、地方会計事務所もコンサル領域の強化を図っていますが、コンサルを主力商品として成り立っている事務所は全国的にもほとんどありません。会計という過去の数字を起点とする作業と、コンサルという将来を起点にする業務を両立するのは至難です。これらのプレーヤーを人材面で見ると、中小企業診断士の資格を持てる程度の能力を持っている人は地域会計事務所にはあまりいないのかもしれません。大手会計事務所系コンサルでも難しいのではないでしょうか。
一方、これからの中小企業に求められることは、戦後復興の高度成長に求められた資質とは明らかに異なります。以前は経済成長にまかせて積極的に投資をすれば誰でも成長できた時代です。バブル崩壊以後、生き残りをかけた戦いをしているように見え、中小企業の実態は大手取引企業のビジネスモデルに依存したビジネスでかろうじて生きながらえているか、当時の蓄えを取り崩しながら息も絶え絶えで事業を継続している企業が大多数ではないでしょうか。
今後は、厳しい状況の企業が、いよいよ自助努力ではどうしようもなくなり、支援のニーズが高まります。すでに経営の苦しい地方銀行も貸し倒れによる追い打ちは避けたく、経営再建に支援を求めます。
このときに求められることは、個別の企業の状況に応じた的確な分析と改善策は当然ながら、実行を伴走的に支援することです。実現までのサポートです。
この点、それだけの実力があるのは中小企業診断士だけです。この意味では競合はいないといえます。
地域の会計事務所がコンサルするのが一番いいけど無理
これも完全な私見です。
私は地域の会計事務所がコンサルできれば一番いいと思ってます。効率がいいんです。
会計事務所は会社の会計数値はもちろん、社長のプライベート、個人資産、子供の進学、親族との関係、などなど非常に信頼され頼りにされています。
これはどんなコンサルや士業にも真似できません。会計事務所の最高の強みです。ここにコンサルティング機能が加われば、まさに一番です。
ですが残念ながら地方会計事務所というのは、有資格者の先生に、高卒や専門卒のスタッフが弟子のように付き従う古き良き士業の世界そのままです。先生はすでに一財産築いているのであとは逃げ切りです。スタッフに突然コンサルやれといっても何をどうすればいいのか?
今現在、地方で伴走型コンサルを高い能力で組織的に行っている団体はほとんどいません。
最適解は地方会計事務所+中小企業診断士でブルーオーシャンへ
これは妄想です。
中小企業診断士は個人活動がほとんどです。チームでコンサルに当たる場合はあるにしてもほとんどは組織に所属していません。ましてや会計事務所と懇意にしていることもありません。
ですが、今後の最適解を考えると、中小企業診断士が地方会計事務所と手を組み、コンサル領域を作っていくことが良いのではないかと考えます。
中小企業診断士からすれば会計事務所の顧客がそのままお客となり、会計事務所からすればコンサル能力を獲得することができます。
伴走型コンサルの能力は一朝一夕で身につくものではないでしょう。客観的でロジカルな分析、社長の想いを引き出す傾聴、漠然としたイメージを分かりやすい数字や図面に落とす表現力、敵対する組織メンバーの間を取り持つ能力、相手の中から答えを導くコーチング、その背景にある経営理論の深い理解とわずかなティーチング、つまるところ結果に対して責任を負う覚悟の強さ。求められることは多岐に渡ります。一人で全てをそなえることは困難です。だからこそ、税理士、会計事務所スタッフ、中小企業診断士、さらに協力者を求めてもいいでしょう、それらの総合力が必要になります。
この領域はブルーオーシャンです。
私はここに向かって進みます。中小企業診断士の未来は明るい。はず。
まとめます。
- 中小企業診断士は中小企業に対して「経営の診断と助言」をします
- 全国で4,700人がプロとして活躍中!?
- 会計事務所とタッグでブルーオーシャンへ
誰かの参考になれば幸いです。
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