最後は事例Ⅳだね。
H30は難しかったらしいけどどうなの?
はい。概ねそのようです。これから振り返りますが、不正解が多いです。ですが得点は全事例の中で一番高かったです。これは計算過程に加点されているのと得点調整が入っているのではないかと思われます。
ほかの事例はこちら
事例Ⅳへの向き合い方
第2次試験は~(中略)~中小企業診断士となるのに必要な応用能力を有するかどうかを判定することを目的とし、中小企業の診断及び助言に関する実務の事例並びに助言に関する能力について、短答式又は論文式による筆記及び口述の方法により行います。
筆記試験は、「経営革新・改善」、「新規事業開発(既存事業の再生を含む)」などの中から、次のように出題します。
・「組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例」
・「マーケティング・流通を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例」
・「生産・技術を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例」
・「財務・会計を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例」
事例Ⅳは「財務・会計」について問われます。
これは事例Ⅰ~Ⅲとは全く異なります。対策はひたすらに何度も練習問題を解くことです。
そして、P/L、B/S,C/Fを図形で理解できるとなお良いです。
P/Lに関してはCVP分析が必須で、こちらの記事を参考にしてください。
平成30年度試験 事例Ⅳの再現答案
これから私が受験した平成30年度の試験を再現していきます。
自慢できる点数ではありませんが、みなさまの参考になれば幸いです。
問題文への書き込みと下書き
▼事例ⅣでもSWOTを意識して与件文を読みます。
▼余白に計算をしています。
▼問題用紙の後ろの方にまるまる使える用紙があります。メモ用紙を綺麗に取り外すにはコツがあります。また別途記事にします。
計算問題でも字が汚いね。
計算は丁寧にゆっくりと行うのがベストです。私は焦りから字も汚くスペースも適当で何度も計算間違いをしました。
再現答案
再現答案は試験翌日に全て書き起こしました。
ご覧の通り下書きを書いていないので、全てそのままかと言われると自信はないですが、記憶のかぎり忠実に再現しております。あとで見栄え良く加筆修正等しておりません。
各予備校が解答を出していますので、私の再現答案と比較します。なお予備校によって解答が割れている場合、再現答案と比較しやすいものを選んでいます。
第 1 問(配点 24 点)
(設問 1 )
D 社と同業他社の財務諸表を用いて経営分析を行い、同業他社と比較して D 社
が優れていると考えられる財務指標を 1 つ、D 社の課題を示すと考えられる財務指標を 2 つ取り上げ、それぞれについて、名称を⒜欄に、その値を⒝欄に記入せよ。なお、優れていると考えられる指標を①の欄に、課題を示すと考えられる指標を②、③の欄に記入し、⒝欄の値については、小数点第 3 位を四捨五入し、単位をカッコ内に明記すること。
再現答案 | 予備校 | 一致 |
①自己資本比率(35.59%) | ①自己資本比率(35.59%) | 〇 |
②売上高営業利益率(1.20%) | ②売上高営業利益率(1.20%) | 〇 |
③有形固定資産回転率(17.08回) | ③有形固定資産回転率(17.08回) | 〇 |
(設問 2 )
D 社の財政状態および経営成績について、同業他社と比較して D 社が優れてい
る点と D 社の課題を 50 字以内で述べよ。
再現答案 | 予備校 | 一致 |
原価率は低いが販管費が高く収益性が低い。資本の安全性は高いが、資本利用の効率性が悪い。(45字) | 着実な事業拡大で自己資本が多く、安全性が高い。一方で販管費の割合が高く、固定資産の活用が進んでいない。(50s字) | 〇 |
第 2 問(配点 31 点)
D 社は今年度の初めに F 社を吸収合併し、インテリアのトータルサポート事業のサービスを拡充した。今年度の実績から、この吸収合併の効果を評価することになった。以下の設問に答えよ。なお、利益に対する税率は 30 %である。
(設問 1 )
吸収合併によって D 社が取得した F 社の資産及び負債は次のとおりであった。(略)
今年度の財務諸表をもとに①加重平均資本コスト(WACC)と、②吸収合併により増加した資産に対して要求されるキャッシュフロー(単位:百万円)を求め、その値を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。なお、株主資本に対する資本コストは8 %、負債に対する資本コストは 1 %とする。また、⒜欄の値については小数点第3 位を四捨五入すること。
再現答案 | 予備校 | 一致 |
①8%×179/503+1%×324/503*(1-0.3)=3.297…≒3.30(%) | ①8%×179/503+1%×324/503*(1-0.3)=3.297…≒3.30(%) | 〇 |
②CF/3.30%=(190-138)、CF=1.716≒1.72(百万円) | ②CF/3.30%=190、CF=6.27(百万円) | ✖ |
題意の解釈誤りです。要求CFにおける「増加した資産」は資産全体を指し、負債を除いた純資産を意味しません。
これによってこの先の問題まで芋づる式に間違えることとなります。
(設問 2 )
インテリアのトータルサポート事業のうち、吸収合併により拡充されたサービスの営業損益に関する現金収支と非資金費用は次のとおりであった。(略)
企業価値の増減を示すために、吸収合併により増加したキャッシュフロー(単位:百万円)を求め、その値を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。⒜欄の値については小数点第 3 位を四捨五入すること。また、吸収合併によるインテリアのトータルサポート事業のサービス拡充が企業価値の向上につながったかについて、(設問 1 )で求めた値も用いて理由を示して⒞欄に 70 字以内で述べよ。なお、運転資本の増減は考慮しない。
再現答案 | 予備校 | 一致 |
(1-30%)×(400-395-1)+1=3.8(百万円) | (1-30%)×(400-395-1)+1=3.8(百万円) | 〇 |
企業価値を維持する最低限のCFが1.72百万円であるところ、3.8百万円のCFが増加しているため、企業価値が向上していると言える。(68字) | 企業価値の向上につながっていない。理由は、増加キャッシュフロー3.8 百万円が、増加した資産に対する要求キャッシュフロー6.27 百万円より少ないため。(70 字) | ✖ |
設問1で要求CFを間違えたので、企業価値向上の判断も逆になりました。
(設問 3 )
(設問 2 )で求めたキャッシュフローが将来にわたって一定率で成長するものとする。その場合、キャッシュフローの現在価値合計が吸収合併により増加した資産の金額に一致するのは、キャッシュフローが毎年度何パーセント成長するときか。キャッシュフローの成長率を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。なお、⒜欄の成長率については小数点第 3 位を四捨五入すること。
再現答案 | 予備校 | 一致 |
(190-138)=3.8(1+g)÷(3.30%-g)∴3.01% | 190=3.8(1+g)÷(3.30%-g)∴1.27% | ✖ |
ここでも設問1の間違えに起因して不正解となりました。
第 3 問(配点 30 点)
D 社は営業拠点として、地方別に計 3 カ所の支店または営業所を中核となる大都市に開設している。広域にビジネスを展開している多くの顧客企業による業務委託の要望に応えるために、D 社はこれまで営業拠点がない地方に営業所を 1 カ所新たに開設する予定である。今年度の売上原価と販売費及び一般管理費の内訳は次のとおりである。以下の設問に答えよ。
(設問 1 )
来年度は外注費が 7 %上昇すると予測される。また、営業所の開設により売上高が 550 百万円、固定費が 34 百万円増加すると予測される。その他の事項に関しては、今年度と同様であるとする。予測される以下の数値を求め、その値を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。
①変動費率(小数点第 3 位を四捨五入すること)
②営業利益(百万円未満を四捨五入すること)
再現答案 | 予備校 | 一致 |
(782×1.07+(232+33)÷1,503×2,053)÷2,053≒58.39% | (782×1.07+232+33)÷1503 ≒73.30% | ✖ |
(1,503+550)×(1-0.5839)-(438+34)=382.25 | (1,503+550)×(1-0.7330)-(438+34)=76.151 | ✖ |
設問の解釈が誤っていました。
私は、来年度の外注費の金額が今年よりも7%増加した金額と解釈しました。なので来期の外注費は×107%、その他の変動費は今期の変動利率に来期の売上高をかけて算出し、それらの合計を来期の売上高で割って変動費率を算出しました。
正しくは、来年度の外注費の金額は、今期の外注費が7%増加した場合の変動費率が維持されるです。
確かに計算結果を見ると、著しく変動費が下がり利益が急激に上がっているので違和感があります。しかし試験中は、「なるほど新規の営業店ではほとんど外注は出さないのだな」と思いました。
来期の変動費の予測なのに、今期の変動費が額面で7%増えるというのもイメージしづらいですよね。変動費なら単位当たりの金額か全体の比率が変動するのが通常ではないかと。
もやもやしてるようですね。
(設問 2 )
D 社が新たに営業拠点を開設する際の固定資産への投資規模と費用構造の特徴について、60 字以内で説明せよ。
再現答案 | 予備校 | 一致 |
営業拠点を開設する際、固定資産へ投資、つまり資産を購入する場合は、固定費の賃借料が削減されることとなる。(52字) | 営業所は賃借のため固定資産への投資規模は小さい。費用構造の特徴は、変動費率が高く、変動費の割合が固定費と比較して大きい。(60 字) | ✖ |
題意が理解できなかったです。固定費に賃借料が計上されているものの、新規の営業所の土地建物を借りるのか購入するのかは与件文にないので両方の可能性があります。
また設問文の「固定資産への投資規模と費用構造」は「購入と賃借」を指していると考えられます。
とはいえ(設問3)まで考えると、一体何を問われているのか分からない状況でした。
(設問 3 )
(設問 2 )の特徴を有する営業拠点の開設が D 社の成長性に及ぼす当面の影響、および営業拠点のさらなる開設と成長性の将来的な見通しについて、60 字以内で説明せよ。
再現答案 | 予備校 | 一致 |
営業拠点の資産を購入する場合、当面の収益性は向上するが、資金調達が必要となり資本構造の安全性が低下することとなる。(57字) | 当面の影響は、営業利益が増加し成長性に寄与する。見通しは、一定の売上が期待できる地域での開設により更なる成長が期待できる。(59 字) | ✖ |
設問2に引き続きよくわからなかったです。
第 4 問(配点 15 点)
D 社が受注したサポート業務にあたる際に業務委託を行うことについて、同社の事業展開や業績に悪影響を及ぼす可能性があるのはどのような場合か。また、それを防ぐにはどのような方策が考えられるか。70 字以内で説明せよ。
再現答案 | 予備校 | 一致 |
協力個人事業主や物流業者との連携やサービス向上が不十分だと、業績に悪影響となる可能性があるため、優秀な人材の確保と教育に注力する必要がある。(70字) | 業務委託先が提供するサービス水準が低く、バラツキがある場合である。方策は、現場での工夫を定期的な研修等で全社的に共有し標準化を図ることである。(70 字) | 〇 |
全体の正答状況
それでは、全体をとおしての正答状況をまとめてみましょう。
問題 | 正答 | 配点 | |
第1問 | 設問1 | ①〇②〇③〇 | 24 |
設問2 | 〇 | ||
第2問 | 設問1 | ①〇②✖ | 31 |
設問2 | (a)〇(b)〇(c)✖ | ||
設問3 | (a)✖(b)✖ | ||
第3問 | 設問1 | ①✖②✖ | 30 |
設問2 | ✖ | ||
設問3 | ✖ | ||
第4問 | 〇 | 15 |
第1問と第4問はおそらく取れていると思います。第2問では設問1の間違えによりそれ以降も芋づる式に間違えています。第3問は自分の理解で全て解答したものの方向性が間違っています。
得点はどうなったでしょうか?
得点開示結果
それでは、得点開示結果を公表いたします。
得点開示の方法はこちらの記事をご覧ください。
4つの事例の中で一番高得点になりました。
正答状況を見ると粗点では60点には全く届いていないと思います。恐らく第2問の計算過程で加点がもらえたことと、得点調整の結果でしょう。
事例Ⅳ「財務・会計」は努力がそのまま表れると言われています。私も全事例の中で一番時間をかけたのは事例Ⅳです。一番変動要素が少ないものを盤石にすることで、ほかがブレても大丈夫と考えました。
会場の声やWebの様子をうかがっていると、今回の事例Ⅳはイレギュラーで既存の問題集では対応できなかったと言われています。
ですが私は1冊の問題集しかやっていませんし、簿記検定も持っていません。第2問も問題集で見たことがあるような問題で、正直、全問正解したと思っていました。一部解釈の間違いでそのまま不正解が続きましたが、計算ロジックはあっていたので加点されたのだと思います。
では、みなさまの参考になれば幸いです。
ほかの事例はこちら
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